「映画の中での"特撮"」

今週のお題「ふつうに良かった映画」に連続投稿(これで四つ目)しているユキンカです。今回は…

東京湾炎上」(1975年日)

 

原作「爆発の臨界」。石油危機等による日本の繁栄、将来に不安が高まりつつあった時代に作られたパニック映画。

日本の巨大タンカー「アラビアンライト」は帰国中にテロリスト達によって占領されてしまう。彼らの要求は鹿児島県にあるコンビナート「喜山CTS」を航空自衛隊の攻撃によって破壊せよ、同時にそれを全世界にテレビ中継せよ。さもなくば「アラビアンライト」を東京湾で人質もろとも爆発させる』というものであった。

東京湾で「アラビアンライト」が爆発すれば首都経済に大打撃を与え、備蓄量が国内石油消費量の2週間分に相当する「喜山CTS」が爆発すれば鹿児島湾は生物も住めない海へと変貌してしまう。

この二つの壁に直面した日本政府が取った選択

それは

「特撮映像を本物とごまかしてテレビ中継する」

だったのです

すなわち、「喜山CTS」のミニチュアを爆発させた映像を、鹿児島の現地のテレビ中継カメラに合成することでテロリストに要求が通ったことを信じ込ませようという手法だったのです。

映画の中で”これは特撮です"と言っている映画はとても珍しいものと思います。

最初に観た時は「映画の世界ではこれが本当でこっちが偽物なのかな、いや逆かな?」と自分に問いかけながらのめり込んでいました。特撮が本物であると信じ込ませることはとても難しい、それを描く映画スタッフの気合はすごいと思いました。コンビナートの爆発は見ようによっては本物の様にも見えますし、火花が大きすぎるのでミニチュアだなと思ったりもしましたが全体的に好感を持って観れました。

 

航空自衛隊がロケット弾を「喜山CTS」に向けて打ち込む。こちらはその様子を「喜山CTS」から何キロも離れた峠の上から眺めている。着弾し爆発が起こる。

しかし爆発音は聞こえない。

あれ?と思った数秒後、爆発音が聞こえて来る。

 

観ていてびっくりしました。

 

大抵の映画では何千キロも向こうで起こった爆発でさえ、爆発と同時に爆発音が聞こえます。しかしこの映画では音は後から聞こえて来るという現実的な要素を取り入れていたのです。この音が後から聞こえて来るというシーンは、1995年に大映が撮った傑作怪獣映画「ガメラ 大怪獣空中決戦」まで観たことがありませんでした。

 

「映画の中での特撮」と「特撮でない特撮」を何とか表現しようとしていた映画スタッフの意気込みが感じられた「ふつうによかった映画」です。

殆ど特撮に関してしか書きませんでしたが、テンポ良い展開はとても楽しく観れると私は思います。特に気に入っているシーンは、テレビ中継を観て疑問に思ったテロリスト達が日本政府に詰め寄るところ、ここの音楽と外国人俳優さんの演技がとても緊迫感があります。最近までDVDでここのシーンだけ何回も巻き戻して観ていました。

またまた長文でしたがありがとうございました。


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