ふつうに良かった映画・「パール・ハーバー」(2001年米)

今週のお題「ふつうに良かった映画」

パール・ハーバー」(2001年米)

日本軍の描写の滑稽さで悪評高い映画ですが、戦闘シーンの描き方、シーン一つ一つの表現を観ていたら興味深かったです。

 

※戦艦アリゾナを800kg爆弾で轟沈させるシーン

アリゾナの弾薬庫まで爆弾が飛び込んで船体が軽く飛び上がる程の大爆発を起こす場面。私の知り合いや多くの友人が「ありえない」と笑い飛ばし、非常に遅く爆発する爆弾が「リアルでない」と酷評していました。

私は軍事モノが好きで確かに変なシーンはあると思いますが、この映画はものすごい興味を与えてくれました。アリゾナに向かって落下していく爆弾の後部に取り付けられた風車、それが止まったら起爆するという表現。私は観ていて「あんな時限装置があったのか?」と疑問に思い、鑑賞後に調べてみたら確かに後部に風車は存在した、しかし時限装置の機能ではないと分かりましたが、今までの戦争映画で爆弾の風車を描いたものは私の知る限りありません。ただ黒い塊が落ちていくだけ。

そして非常に遅く爆発するシーン、あれの描き方もアリゾナがどのように沈んだのかを非常に分かりやすく撮っていたと思います。爆弾の起爆時間は実際は0.5秒程度、ほとんど瞬間的に爆発するものなのでこれは映画的な演出です。同じパール・ハーバー(真珠湾攻撃)を題材にした映画「トラ・トラ・トラ!」(1970年日米)では、史実通り瞬間的に爆発しています。しかし、弾薬庫まで貫通して大爆発を引き起こしたと言う印象は全くなかったです。アリゾナの表面を火炎がつつみこんでいくという印象でした。「パール・ハーバー」では観ている人に「アリゾナは弾薬庫に爆弾が飛び込んで大爆発を引き起こした」というのを分からせようとして結果あの表現になったのではないかと思います。(爆弾が弾薬庫に到達するところをスローモーションで描いたら、史実通りの瞬間的爆発の表現はできたかもしれませんが)

そしてあまりの大爆発に船体が持ち上がるところ。「船がジャンプなんかしねーだろ」と私の周りは扱き下ろしていました。しかし、真珠湾攻撃当日、米兵が撮影していた本当のアリゾナ沈没フィルムを観てみたら、前部艦橋が同じ高さの後部艦橋より上に飛び上がっているのです。大爆発の影響で小さな津波まで起こっています。一瞬ではありますが、大噴火のような爆発で大重量の戦艦が軽くジャンプまでしていたのだと知りました。

他にもいっぱい興味をもたらしたシーンはありますが「アリゾナの沈むシーン」だけにします。

散々な評価ですが、この映画が作った描き方は後年の戦争ゲームにも影響を与えています。日本の描き方は気になってしまいますが、私にさらなる興味をもたらしてくれた「ふつうにいい映画」とここに書きます。長文でしたがありがとうございました。